ピラティスとは

障害や病気の快復、スポーツやダンスなどのパフォーマンス向上はもちろん、肉体的な強靭さ・柔軟性・美しさ、コンディショニング、ストレス軽減、集中力向上など様々な効果をもたらしてくれるエクササイズです。

 

歴史(ピラティスの原点)

ピラティスの創始者は、

Joseph Hubertus Pilates

(ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティス)です。

1883年(1880年という説もある)12月9日にドイツのデュッセルドルフ近郊で生まれました。

幼少期は、くる病や喘息の持病、リウマチ熱に苦しみ、辛い幼少期を過ごしていたようです。

これらの病を克服するため、体操、ボクシング、スキー、ダイビング、格闘技、ヨガなど多くの身体訓練法やスポーツに取り組み、自らの身体を鍛えていきました。14歳には解剖学のモデルになるほどの健康体だったそうです。

1912年に仕事のため(ボクシングを追及、サーカス団の一員として、など諸説あり)、イングランドへ移住。

その頃、第一次世界大戦が起こり、敵国民であったことから捕虜となってしまいます。この期間に仲間の捕虜の体力と全般的な健康の回復を手助けすることを始めます。そして、収容されたマン島で看護助手として負傷兵のサポートをすることも・・・

負傷兵をあいてにベッドのスプリングを抵抗として用いて、さまざまな運動を指導。多くの負傷兵のリハビリテーションに関わりました。

これが後に「コントロロジー」と名付けられる身体調節法(現在のピラティスメソッド)の始まりであるとされています。

第一次世界大戦後、ドイツに帰国すると政府から新しい軍隊の訓練を頼まれますが、当時のドイツの政治的傾向を好まず、アメリカへ移住し、ジムを開設します。ジムを開設したビル内には、世界的に有名なダンサーのスタジオがありました。まさに運命的な出会いです。

このダンススタジオの世界的有名なダンサーたちがピラティスを受けていたことが口伝えに広まり、多くのダンサーの信頼を得ることとなりました。そして、彼の顧客はダンサーにとどまらず、ニューヨークの上流階級の人々や映画スター、医者、ビジネスマン、音楽家、体操選手など多くの人々を集め、人気のエクササイズとなります。

現代ではリハビリや治療目的で行う人や、美容・ダイエット目的で行う人、スポーツパフォーマンス向上目的で行う人、日常の生活をより良くするために行う人など幅広い分野で活用されるエクササイズとなっています。

ピラティスの種類

ピラティスのエクササイズは大きく分けて

①マットエクササイズ

②イクイップメントエクササイズ

の2つが存在します。

①マットエクササイズ

あお向け、うつ伏せ、横向き、四つ這い、座位、立位などバリエーションに富んだエクササイズがあります。

背骨やお腹の圧迫を避けるため、ヨガマットと比較すると柔らか目のマットを使用します。

エクササイズ内容としては、自重を使ったエクササイズが主となるので、マットさえあればご自宅でも行えるエクササイズです。

また、フォームローラーやサークル、ボール、セラバンドなどを使用して、より応用的なエクササイズなども行われます。

②イクイップメントエクササイズ

主にイラピズテーブル、リフォーマー、ラダーズバレル、チェアーなどがあります。これらの器具は、スプリングを抵抗としてエクササイズを行えたり、椅子のような形をしているため座って行えたりと負荷量を調節しながらできます。

また、膝立ちや座位、立位で行うエクササイズも多く、接地面が固定された安定した状態から、固定されていない不安定な状態まで多くの環境を設定しておこなえるのでアプローチの幅を広げることが可能です。

ピラティスの効果

これらの効果について以下にまとめていきます。

ダイエット効果

ピラティスは、美しい身体をつくる最適なエクササイズと言われています。

ダイエットはあくまでも健康的に痩せることが大前提です。過度な食事制限、偏ったトレーニングなどで一度は痩せたとしても、1年後、2年後にその状態をキープできているでしょうか?

ピラティス・メソッドは、必要最低限のエネルギーで、関節は柔軟に、力の伝達は身体を連動させてスムーズに動かすことが目的です。

これは、「インナーマッスルを鍛え、効率の良いエクササイズ行うこと」をさしています。インナーマッスルは各関節を安定させる要素があり、インナーマッスルが働いていないと、姿勢は歪み、その周囲の筋肉は働きにくくなります。

そして、姿勢の歪みにより身体の偏りがおきると内臓の位置も偏ってしまい、正常な内臓の働きができなくなってしまいます。筋肉や内臓が働きにくくなってしまうと結果的に基礎代謝が下がってしまうのです。

ピラティスによってインナーマッスルを鍛えることで歪んだ姿勢を修正し、基礎代謝が改善し、痩せやすい身体・太りにくい身体

をつくることができます。

パフォーマンスの向上

アスリートにおけるピラティスを行なう目的としては、「姿勢や動きの視覚的なコントロールとどのように動いているのかという身体感覚の統合トレーニングをベースとして、実戦でアスリートが自分のイメージ通りに自分自身の身体を動かせるようになること」です。

人の動きは、単純な関節の動きや基本的動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行)から、日常生活活動、軽い運動と様々な目的に合わせた動きがあります。

そして、正しい動きとは解剖学的・運動学的に骨・関節が正しい位置にあり、それぞれの筋肉が本来の役割として関節運動に貢献することをいいます。

これらの動きにおいては、

「高精度」「高強度」「高効率」な動きが求められるのが競技運動であります。

動きの基礎の部分である「人の基本的な動き」が正しくできなければ、日常生活活動の動きだけでなく、精度や強度の高さを要求されるアスリートの動きを実践するのは困難です。

ピラティスは幅広い視点で人間の動きをとらえ、いかにより最小限の力で効率的に、美しく動けるようにするかを学ぶことができます。

人間の基本的な動きにおける潜在能力を最大限に発揮することでより実践的なスポーツパフォーマンスを上げることができます。

姿勢改善

ピラティスを行うことでなぜ姿勢が改善するのでしょうか?

理由は、大きく分けて3つのことがあげられます。

・インナーマッスルを鍛えられる

・筋肉のバランスが整う

・背骨、骨盤、内臓が正しい位置に戻る

インナーマッスルは、関節を安定させる役割があります。

「安定させる役割」とは、「関節がズレる方向に動くのを防ぐ」ということです。

例えば、毎日の通勤中に重いバッグを右肩にかけて持っている場合、身体は右側に傾いてしまいます。この状態が何ヵ月、何年と続いてしまうとさらに身体は傾き、背骨が少しずつズレることで姿勢が崩れてきてしまいます。

インナーマッスルが弱い場合、関節の安定性が不十分であり、ズレに対し抵抗できない状態なのです。硬い金属でもずっと曲がるようなストレスがかかっていれば、いつかは折れ曲がってしまうように、身体も負担がかかってしまうのです。

また、デスクワークでも同様です。パソコンに向かって仕事をしていると、いつの間にか姿勢は丸くなってしまいます。毎日、8時間同じ姿勢でいることで、お腹の筋肉は縮こまり、背中の筋肉は伸びきってしまいます。

この不良姿勢に対し、縮こまった筋肉は伸ばし、伸びきってしまった筋肉は収縮させることで、筋肉のバランスを調整することができます。

ピラティスはインナーマッスルを鍛え、身体のバランスを調節することで日々の身体へのストレスを軽減し、姿勢を改善することができるのです。

腰痛、肩こりの改善

背骨は

7個の頸椎(首の背骨)、12個の胸椎(胸の背骨)、

5個の腰椎(腰の背骨)の計24個の椎骨が積み木のように重なって背骨を構成します。

背骨のどこか一つが硬くなってしまうとそれ以外の背骨が過剰に動いてしまいます。特に胸椎は胸郭を構成する肋骨(あばら骨)に囲まれており、動きが固定化されやすいという特徴をもってます。

そして、呼吸機能の低下や運動習慣の減少により、さらに胸郭の柔軟性が低下してしまうと、胸椎の可動性も低下してしまいます。

胸椎の可動性が低下すると上下に位置する頸椎と腰椎は過剰に動いてしまい、頸部痛や腰痛、肩こりと身体の異常が起きてしまうのです。ピラティスエクササイズでは脊柱の柔軟な動きを取り入れたエクササイズが数多く存在しているので、これら症状に対しても有効です。

例えば、先ほどの胸椎の可動性低下が原因で腰痛、頸部痛、肩こりを起こしているのであれば、脊柱の椎骨を1つひとつを均等に動かしていくエクササイズを行うことで、上述したの胸椎の可動性低下の改善に繋がります。

障害予防

日常生活での癖や仕事による身体への負担などにより体に歪みがあると、思うように力を発揮できなかったり、怪我や故障したりする原因になります。

では、筋力や柔軟性を改善されれば、怪我や病気を防ぐことはできるのでしょうか?

筋力や柔軟性はとても大事ですが、これらが改善されたとしても怪我をしてしまう可能性はなくなりません。

それでは、何が必要になってくるのか?

答えは「身体の正しい使い方を覚える」ということが重要になってきます。

ピラティスでは体幹を鍛えられますが、この体幹の強化自体はピラティスの本質ではありません。

ピラティスの本質は、

身心(体・心・精神)のコントロールであり、日常生活からスポーツまであらゆる動きに対し身体を使いこなせるように修得することです。

そのため、ピラティスでインナーマッスルを鍛え体の歪みや姿勢が改善し、身体の動きと動作のイメージを統合させ、思った通りの動きができるようになることが、ケガや故障の予防になるのです。

ストレス軽減

自立神経とは、緊張状態とリラックス状態を自動でコントロールしてくれている神経のことを言います。

交感神経と副交感神経の二つがあり、交感神経は緊張状態や興奮状態をコントロールし、副交感神経はリラックスした状態をコントロールすると言われています。

私たちは、これら2つの神経がてんびんのようにバランスを取り合いながら生きているのです。

ピラティスはこれらの自律神経系の機能を整える効果があると言われており、自立神経系との関与としては呼吸法があげられます。

ピラティスのエクササイズ中の呼吸法は、

「胸式呼吸」です。

この胸式呼吸は、交感神経を優位にさせ、全身への酸素量を増やし、「前向きな気持ちになれる」効果が期待できるのです。

ピラティスのエクササイズは自分の身体と向き合い、自分自身の身体をコントロールする必要があります。

このエクササイズ中では、深層にあるインナーマッスルに集中することで日常生活での悩みや考え事から解放されるのでストレスを緩和することができます。

また、胸椎(胸に位置する背骨)のそばに自律神経が存在するため胸椎を意識して動かすピラティスは有効と言えます。

なぜ自立神経が存在する胸椎を動かすといいのでしょうか?

例えば、猫背の人は背中が丸くなり胸の周りが硬くなっています。同時に胸椎の動きも制限されてしまい、胸部周囲の循環が悪くなることで栄養がいきわたらなくなり、自律神経が正常に働かなくなってしまいます。

ピラティスのエクササイズでは背骨を細かく動かすことが多いので、自律神経の活動を活発にさせ、ストレスに強い身体を作るのに適しているのです。